2012年4月11日水曜日

広島の女真理の夜 第1回

「やっぱり小林幸子の恋の最初は不倫だったのか」
 真理はテレビのワイドショーを見ながら自分自身に言い聞かすようにこう言った。
「ひと歳とった女性が恋をするとどうしてもスンナリとはいかない。誰かを傷つける。いや傷つけるくらいでは済まない。地獄絵図になる場合もある」
 事実真理の高校の同級生で成績がトップだった女性は大きな病院の医師をしていたが、不倫がばれて広島におれなくなってあてもなく東京に出たが、この情報は東京にも伝わっていて職はなかった。
「因縁つきの僻地で医師として働いている」
 真理は三十歳を過ぎた。
「焦りがないといったら嘘になる」
 高校の同級生の女性が子供を連れて歩いていると、たまらなく羨ましくなるのである。
「でも私は結婚どころか恋を知らない」
 大学を卒業後教師として働いて恋をする暇がなかったのである。
「どう生きたらいいのだ」
 真理は自問自答した。

0 件のコメント:

コメントを投稿