野路由紀子が民放東京キー局に入社して看板女子アナにのし上がったのには局長の大きな引き
立てがあったからである。
「おれも東京の下町出身で、喋り方が落語だとよく言われた。野路くん、くさらずにがんばれよ」
いつもこう言ってくれたのである。
野路は涙が出るほど嬉しかった。そして入社半年後、
「会社の看板番組の突撃レポーターに抜擢」
この栄誉に輝いたのだった。
入社してだいぶ経つのにろくな仕事が無い先輩女性アナも数多くいる中での抜擢である。
野路由紀子は、東京の下町にも山の手にも詳しい知識をもっている事を評価されたのである。
先輩女子アナの嫉妬は凄かった。
でもこんな事でくじける野路由紀子ではなかった。
先輩女子アナの嫉妬をうけるとき、
「これは自分に対する声援だ」
こう思うのだった。
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